個人再生の質問 3
個人再生に関して、よく頂くご質問について、弁護士が解説します。1ページ目、2ページ目もあわせてご覧ください。
住宅の価値はどのように調べるか
FX等の投資行為について
再生手続と税金の滞納について
再生計画に対する債権者の意見
再生計画が認可されると
個人再生の手続を取っていることを他人に知られてしまうか
個人再生をどの裁判所に申し立てるか
住宅の価値はどのようにして調べるのですか。
個人再生では、再生計画に基づく弁済総額は「債務総額に対するパーセンテージ」か「保有する財産の総額」のどちらか高い方です(パーセンテージは債務総額により異なります。こちらの表をご覧ください)。そこで、保有資産の算出が問題となります。
預金や解約返戻金は数字が明確なので分かりやすいのですが、不動産の資産価値の基準には、固定資産税の評価額や、路線価、時価があり、どれを使うのか分かりにくいところです。この点、個人再生において不動産の価値は通常は「時価」で判断されることになります。時価よりも安い、固定資産税評価額や路線価で資産価値を判断することは、特に東京や神奈川といった首都圏の物件については、ほぼありません。時価を知るためには、不動産業者による無料査定を利用すると良いでしょう(よくチラシがポストに入っていると思います)。査定された価格から、ローンを差し引いた額が、所有する不動産の価値となります。
なお、不動産の無料査定をお願いする際のポイントですが、不動産業者さんとしては、自社で仲介を行いたいと考えることが多いため、実際よりも高めの査定額を付けてくることがあります(「うちに依頼してくれれば、これぐらいで売れますよ」ということだと思います)。そこで、無料査定を依頼する際には、「実際に売却するとすればいくらで売れるのか、現実的な金額を教えてほしい」と伝えておくと良いかもしれません。
個人再生では、住宅の価値がポイントとなるケースが多いので、個人再生を検討されている方は、あらかじめ、無料査定などを利用してみると良いでしょう。
FXや先物取引が原因で債務が増えてしまったのですが、再生手続上で問題はありますか。
個人再生は破産とは異なるので、破産のような「免責不許可事由」という概念はありません。したがって、債務が増えた原因としてFXや先物取引が関係していても、そうであるからといって再生手続が認められないということはありません。また、再生ではなく破産手続であっても、「裁量で」免責される可能性はあります(破産手続と投資行為に関してはこちらをご覧ください。)。
FXや先物取引が原因で債務が増大しても再生手続を取ることは可能ですが、とはいえ、裁判所に再生が認められるためには、将来にわたって再生計画上の弁済が可能であることが認められなければなりません。このような観点からすると、将来の収支にとってネガティブな要因となるFXや先物取引といった投機的行為は、再生手続を取ると決めた場合には、どこかで止める必要が出てきます。
税金や年金、健康保険の滞納がありますが、再生手続ではどのように扱われますか。
税金や年金、健康保険といった公租公課の滞納があっても、再生債権(銀行やクレジット会社からの借入金等)のように、滞納額が圧縮されることはありません。したがって、再生計画が認可されて再生債権者への弁済がスタートしても、その手続きとは別に、公租公課は支払っていく必要があり、滞納を解消することが求められます。裁判所からも、再生計画を認めるか否かの判断に関連して、どのようにして公租公課の滞納を解消する予定なのか、報告するよう求められます(あまりにも滞納額が大きいと、本当に再生計画どおりに再生債権者への弁済が継続できるのか疑問視されるわけです)。したがって、公租公課の滞納額によっては、毎月いくらぐらいであれば支払いが可能か、事前に滞納庁と相談する必要も出てきます。
再生計画に対して、債権者から意見(同意しない)があった場合、手続はどうなりますか。
小規模個人再生と給与所得者再生とで、債権者の意見に関しては扱いが異なります。
前者の小規模個人再生の場合、認可の要件として、「同意しないと回答した議決権者(平たくいうと債権者)が議決権者総数の半数に満たず、かつ、その議決権の額が議決権者の議決権の総額の二分の一を超えないとき」というのがあります(民事再生法230条6項)。逆にいうと、同意しないと回答した債権者が、債権者総数の半数以上であった場合、または、同意しないと回答した債権者の債権額が総債権額の2分の1以上であった場合は、再生計画は認可されません。この場合、改めて、このような書面決議の制度がない給与所得者再生に切り替えて「再生」の申立てを行うか(一般的には返済総額は増えます)、「破産」等に方針を変更するしかありません。
一方、給与所得者再生の場合は、債権者が再生計画について意見を述べることはできますが、小規模個人再生のように書面決議の制度はありません。したがって、債権者の意見による影響という点では、給与所得者再生の方が利用しやすいということになります。しかし、給与所得者再生は、一般的に小規模個人再生よりも支払総額が増えてしまうので、やはり、まずは小規模個人再生で進めることを検討し、例外的に、不同意の意見を出す債権者が多そうであるとか、不同意の意見を出す債権者の債権額が多数を占めているという場合には給与所得者再生で進めるべきと考えます。不同意の意見を出す傾向があると言われているのは、政府系金融機関や信用保証協会などで、また一部クレジット会社に不同意の意見を出す傾向があります。債権者の構成や債務額などを考慮して、最初から給与所得者再生で行くか、弁護士と協議して決めると良いでしょう。
裁判所に再生計画を認められた後の、具体的に支払方法を教えて下さい。
無事に裁判所に再生計画が認められると、その後は、その計画に従って、債権者へ毎月の支払を行うことになります。再生計画では、各債権者に対して、毎月何日までにいくらを支払うのかを決めるので、その金額を毎月、ご自身で債権者に支払うことになります。例えば、A社には毎月6250円、B社には2780円、C社には1890円…といった形になります。債権者から振込先口座の案内が届くので(振込票を渡してくる債権者もいますが、たいていは口座振込です)、毎月の支払日までに、指定の口座に振り込んで下さい。再生計画に基づく支払いがスタートする頃には弁護士も業務終了となり手が離れていますので、ご自身で毎月の支払いを管理する必要があります。
個人再生の手続を取っていることを他人に知られることはありますか。
再生の申立てを裁判所に行うと、破産と同様に「官報」に住所と名前が掲載されます。ネット上にも一定期間の官報がアップされるため、知られてしまう可能性がないとは言えません。もっとも、特定の誰かの名前が官報に掲載されているのではないかと興味をもって調べるような一般の方は少ないとは思うので、友人や知人、職場関係の人間に知られるリスクを過剰に気にするのは得策ではないと思います。
個人再生はどこの裁判所に申し立てるのですか。
営業者かどうかで異なり、営業者の方は主たる営業所の所在地を管轄する裁判所、非営業者の方は住所地を管轄する裁判所に個人再生を申し立てることになります。具体的な例をあげると、横浜市に居住しているが、大田区に主たる営業所があり人を雇って事業を行っている方(営業者)は、横浜地方裁判所ではなく、営業所のある東京地裁に個人再生を申し立てることになります。一方で、会社員やアルバイト、専業主婦の方は、営業者ではありませんので、お住まいの地域を管轄する裁判所に個人再生を申し立てることになります。川崎にお住まいであれば、横浜地方裁判所川崎支部になります。
個別の事案に関するご質問
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