個人再生の質問 2
個人再生に関して、よく頂くご質問について、弁護士が分かりやすく解説します。1ページ目、3ページ目もあわせてご覧ください。
清算価値保障原則とは
保険の解約返戻金について
自動車の取扱いについて
個人的な債権者の取扱いについて
個人再生手続きの連帯保証人への影響
滞納税金がある場合
個人再生委員が付くかどうか
専業主婦の個人再生は可能か
「清算価値保障原則」という言葉を聞いたのですが、どういう原則ですか?
個人再生での計画弁済額の下限を決める基準としては、まず債務総額に対する比率があります。例えば債務総額が100万以上〜500万円の場合は100万円、500万円超から1500万円の場合は総額の5分の1となっています。小規模個人再生の場合は、この債務総額(住宅ローンは除く)に対する比率の金額と、所有資産相当額とを比較して、所有資産の総額が大きい場合には、所有資産に相当する金額を弁済しなければなりません。これを「清算価値保障原則」といいます。
自己破産の場合であっても、所有資産があれば、換価されて債権者は配当を受けることができるので、このこととパラレルに、個人再生の手続の場合にも、最低限、所有資産分は支払うことが必要となるわけです。
なお、給与所得者再生の場合は、この他に、可処分所得2年分というのも、再生計画に基づく弁済の下限を定める基準となります。
解約返戻金が出るタイプの生命保険に加入していますが、解約の必要はありますか?
個人再生の申立てにあたって、保険を解約する必要はありません。
もっとも、上記の清算価値保障原則との関係で、解約返戻金額は、資産のひとつとしてカウントされるため、事案によっては、再生計画に基づく弁済総額を押し上げることがあります。
車を手元に残すことは可能ですか?
ローン支払い中の車については、ローンを完済するまで、所有権がローン会社に留保されている場合が多く(所有権留保)、このため、再生の手続を取ると、ローン会社に車を引き揚げられてしまうおそれがあります。
一方、ローンを完済した車については、引き揚げられることはありませんが、車の価値が「清算価値」としてカウントされ、再生計画の弁済額に影響する場合はあります。
親族や知人からの借金があるのですが、迷惑をかけたくないので、手続から外すことはできますか?
全ての債権者について、等しく債権額を圧縮するのが個人再生ですから、一部の債権者だけを手続から除外することはできません。特定の債権者には全額を支払うが、その他の債権者は一部しか支払わないというのは、手続上、不公平となるからです。
個人再生の申し立てによって、連帯保証人に影響はありますか?
個人再生の申立てにより、主債務者の債務が圧縮されても、連帯保証人の債務には原則、影響がありません(民事再生法177条2項。例外として住宅資金特別条項を定めた場合(民事再生法203条1項))。したがって、主債務者が個人再生を選択すると、(そのための弁護士介入通知を機に)連帯保証人に対して、債権者から請求が及ぶことになり、場合によっては期限の利益を喪失したとして、一括弁済を求められます(住宅資金特別条項を定める場合の住宅ローンについては、主債務者の支払いが続くので、連帯保証人に請求が及ぶなどの不利益は通常ありません)。
したがって、知人や親族に連帯保証をお願いしている方は、個人再生手続を取ることについて、事前に連帯保証人に対して説明をしておく方が良いかもしれません。場合によっては、連帯保証人の方も、自己破産や個人再生など何らかの債務整理を検討する必要も出てきます。
滞納している税金の支払額は圧縮されますか?
税金や、国民健康保険料、年金等については、個人再生の手続の中で支払額が圧縮されることはありません。もっとも、個人再生の手続とは別ですが、個別に役所に相談に行くと、滞納している税金等の支払い方法について、相談に応じてくれる場合があります。
裁判所に再生を申し立てると「個人再生委員」という人が付くと聞いたのですが?
「個人再生委員」とは、裁判所が選任する機関(基本的には弁護士が選任されます)で、申立人の財産や収入の状況を調査したり、申立人が作成する再生計画案に対して勧告を行う者です。
ただ、全ての事案で個人再生委員が選任されるわけではなく、川崎や横浜の裁判所の運用では、弁護士が代理人として民事再生(個人再生)を申し立てた場合には、原則として個人再生委員は付きません。
一方で、弁護士を申立代理人として付けずに申し立てた場合は、個人再生委員が付き、個人再生委員に対する報酬(15万円〜)を別途納める必要が出てきてしまいます。
なお、東京地裁の場合は、弁護士が申し立てた場合でも個人再生委員を付ける運用とされています。再生を申し立てる際には、弁護士を付けるか否か、どの裁判所に申し立てるか(川崎や横浜にお住まいの方が、東京地裁に申し立てる理由はありません。)について、弁護士のアドバイスを受けた方が良いところです。
専業主婦ですが、個人再生は可能でしょうか?
個人再生は、3年〜5年の間、再生計画に則り、弁済を継続することが可能であることが認められないと不認可とされてしまいます。この履行可能性は、事案により個別・具体的に判断されますが、申立人が専業主婦の場合は、(夫に収入があったとしても)自身は無収入であるため、この点だけを見ると、履行可能性は否定されることになります。もっとも、履行可能性を判断するにあたって、裁判所には家計簿等の資料を提出するのですが、申立人である専業主婦が無収入であっても、同居の夫には将来にわたって継続的に収入を得る見込みがあり、収入から生活費等を引いても、計画上の弁済に充てるだけの余剰があれば、履行可能性ありと判断される余地はあります。ただし、やはり、完全に無収入というのは、履行可能性にとってマイナスの要素ですから、パートやアルバイトをして、自身も収入を得るようにしておきたいところです。
個別の事案に関するご質問
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