相続の質問｜武蔵小杉綜合法律事務所

相続に関する質問

相続に関してよく頂く質問を弁護士が解説しています。

相続財産にはマイナスの資産（負債）も含まれるのか。
生命保険の死亡保険金は遺産となるか。
パソコンで作成した遺言書の有効性
遺言と異なる遺産分割の可否
遺産の範囲に争いがある場合（生前の預金の引き出しなど）
【遺産分割】遺産に不動産がある場合の分割方法
【遺産分割】遺産の評価（不動産）について

亡くなった者（被相続人）には不動産や預金の他、借金もありました。相続財産にはこの借金も含まれるのですか。
相続のFAQ

遺産の範囲にはマイナスの財産（負債）も含まれます。借金もマイナスの財産として遺産になるため、単純相続すると、負債も引き継ぐことになり、思わぬ請求を受けることにも繋がります。したがって、相続が発生した場合は、プラスの財産だけでなく、マイナスの財産がないかよく調べる必要があります。明らかにマイナスの財産の方が大きく、相続したくないという場合には、相続放棄という方法もありますが、相続放棄をするとプラスの財産も受け継ぐことはできなくなるので、注意が必要です。

亡くなった者（被相続人）が自身を被保険者とする生命保険に加入していましたが、死亡保険金は相続の対象となりますか？
相続のFAQ

「受取人」として誰が指定されたかにより、受取人の固有の財産となるか（相続財産とはならない）、相続の対象になるかが変わります。
まず、受取人として特定の誰かが指定されていた場合は、指定された人の固有の財産となるため、相続の対象とはなりません。したがって、受取人と指定された人が、「相続放棄」をした場合でも、死亡保険金については受け取ることができます。
また、受取人が単純に「相続人」と指定されていた場合も、上記と同じです。
これに対し、受取人が被相続人自身（亡くなった人自身）とされていた場合は別です。この場合には、被相続人自身に保険金請求権があることになり、それを相続人が「相続」することになります。

パソコンで遺言書を自作しようと思うのですが、有効でしょうか。
相続のFAQ

あくまで遺言書を自作する場合は、財産目録として添付する別紙は除いて、本体部分（例えば「長男には○○を相続させる」）は自筆で作成しなければなりません。パソコンやワープロでは無効とされてしまいます。もっとも、相続法の改正により、平成３１年１月１３日から、自筆証書遺言書に添付する「財産目録」については、自書ではなく、パソコン（ワープロ）作成や、通帳のコピーを添付する方法でも良くなりました。注意点としては、財産目録をパソコン（ワープロ）で作成したり、通帳のコピーを添付する場合は、「各ページに自筆で署名・押印」することが必要となります。

遺言に記載された内容と異なる遺産分割を行うことは可能ですか。
相続のFAQ

可能ですが、相続人全員が同意することが必要となります。
また、遺言により、相続人ではない第三者に対して遺贈が行われた場合には、この受遺者の同意も必要となります。
ただし、遺言により「遺言執行者」が指定されていた場合、この遺言執行者は相続財産の管理や遺言の執行に必要な行為をする権限を有しているため、相続人はその執行を妨げるような行為はできないとされています。このため、遺言執行者が指定されている事案の場合は、遺言執行者の同意や管理のもとで、遺言の趣旨に反しない内容で分割をすることが必要となります。
なお、法律上、遺言と異なる遺産分割を行うことは可能ですが、課税上の問題は別となるので、注意が必要です。

被相続人の生前に、特定の相続人が被相続人の預金からお金を引き出しているなど、遺産の範囲に争いがある場合も遺産分割調停は可能ですか。
相続のFAQ

実際の遺産分割調停では、「特定の相続人が、被相続人（故人）の亡くなる前に、故人の銀行口座からお金を引き出していた」ということが争点となることはよくあります。相続人のうち特定の人が高齢となった故人の通帳を占有・管理していた、ということは世間ではままあることですが、相続が発生すると、このような行為が争点化し、引き出されたお金が何に使われたのか（被相続人のために使われたのか、特定の相続人が私的に流用したのか）、引き出されたお金を遺産に含めて計算すべきではないか、といった点で相続人同士が対立するケースが出てきます。このような使途不明金問題は、家庭裁判所による遺産分割調停ではなく、地方裁判所での民事訴訟（不当利得返還請求など）で解決するのが原則です。遺産分割調停の中で話をすることが禁じられているわけではなく、当事者が歩み寄れるようであれば、調停で話合いを進めることは可能ですが、歩み寄りができない場合、調停での話合いを進めることはできません。遺産の範囲を確定するために、別途、使途不明金問題について民事訴訟で解決を検討することになります。

【遺産分割】遺産に不動産がある場合の分割方法
相続のFAQ

遺産に不動産がある場合、不動産をどのように相続人で分けるかということは、遺産分割ではよく問題となります。相続人の共有とすることも可能ですし、土地を分筆して分けることも可能です。また、複数の不動産がある場合は、相続人それぞれが何を取得するのかを決めたるということも可能です。しかし、共有のマイナス面として、誰が今後管理を行うかなどの調整が難しいということや、共有者についても相続が発生すると、所有者が多数になり、将来の相続人に負担をかけてしまうという点があります。また現物分割では、一人あたりの取得面積が小さくなり利用価値がなくなってしまうなど、遺産分割の手段としてあまり現実的ではないという面もあります。実際の遺産分割の場面では、以上のような共有や現物分割より、不動産を売却して代金を分割する方法（換価分割）や、相続人のうち誰かひとりが不動産を取得して、それ以外の相続人に代償金を支払うという方法（代償分割）になるケースが多いように思います。

【遺産分割】遺産に不動産がある場合、不動産の価値はどのように評価しますか。
相続のFAQ

遺産に不動産がある場合、不動産の価値をいくらと評価するかが問題になることがあります。例えば、上記のQAに記載したような、特定の相続人が不動産を取得して、それ以外の相続人に代償金を支払う（代償分割）の場合、代償金を算定するためには、不動産の価値を評価する必要が出てきます。この不動産の評価について、相続人同士が「この評価額で良い」と合意できるのであれば、その金額を前提として話合いを進めて行けば良いのですが、不動産の価値でもめた場合は、まずは、それぞれの当事者が、自分が正しいと考える価値を資料とともに提示することが必要です。
この点、不動産の価値を定める基準には、例えば、固定資産税評価額、相続税評価額、公示価額、実勢価格（不動産業者による査定額など）がありますが、東京や神奈川などの首都圏の不動産については、実勢価格、いわゆる時価を基準とする場合が多いところです。一方で、あまり不動産売買取引が行われないエリアや山林などの場合は、実勢価格を探るのが難しいので、他の基準（固定資産税評価額や相続税評価額）を用いることが多くなります。なお、実勢価格を調べる方法としては、不動産業者に査定を依頼するのが一般的です。無料で査定を行ってくれる業者もありますので、まずはそういう業者を探して、査定を依頼すると良いと思われます。
それでも不動の評価で意見が対立して話合いがまとまらない場合、そのような場合は家庭裁判所の調停を利用して遺産分割の解決を図ることになるのですが、調停においては、「鑑定」という手続を取ることがよくあります。鑑定では、裁判所が選任した不動産鑑定士が、中立の立場で対象不動産の価値を評価します。もっとも、鑑定を行うには費用がかかり、鑑定を行う前に予め鑑定費用を裁判所に納める必要があります。鑑定費用は、対象となる不動産の個数や条件によって幅があり、数十万以上かかる可能性があります。したがって、調停で鑑定を行う場合には、当事者の費用負担の割合（申立人と相手方のどちらがどれだけ負担するのか）を予め当事者で合意しておくことが必要になります。